フラッシュバックの対処法とトラウマからの回復
フラッシュバックとは、過去に強いトラウマ体験(心的外傷)をした場合に、その時の嫌な記憶が後々になって急激にかつ非常に鮮明に思い出されたり、同じような夢を見てしまったりする現象のことを指します。さて、果たしてこのフラッシュバックに対処できる方法はあるのでしょうか。
今回は「トラウマによる嫌な記憶のフラッシュバックの対処法」について説明します。
1.フラッシュバックとは
フラッシュバックとは、過去のトラウマを受けて発現する心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害(ASD)の特徴的な症状のひとつであるといわれています。
例えば日々の生活の中で、自然災害や交通事故、あるいは暴力被害などを経験して自分が死んでしまうかもと極端に感じるような強い恐怖感を抱くイベントに遭遇したとします。その場合に適切な対処をしないままに時間が経過していくとその際に受けた大きな傷が後に悪化してフラッシュバックとして深刻な症状を引き起こすことがあります。
また、フラッシュバックという用語は過去に起こった莫大な記憶の中で、特にその記憶が自分にとって嫌なイメージを持ち、無意識的に不意に思い出されて、かつその時の光景がまるで現実世界で重複して起こっているかのような錯覚ともいうべき感覚を非常に激しく察知した際にも用いられます。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害(ASD)だけがフラッシュバックを起こすのではありません。
発達障害の方の一部にもこのフラッシュバックを起こしてしまうこともあります。
そもそものトラウマについては以下のページで解説しています。
2.フラッシュバックにはどんな症状があるのか
深刻な過去のトラウマが発生した場合における特有の反応として、過覚醒、回避、麻痺行動以外に、フラッシュバック(侵入症状)が挙げられます。
具体的には、フラッシュバックでは思い出したくなくてもそのインパクトが大きい出来事や関係するイベントを自分の意志に反して勝手に思い出したり考えたりしまう症状が代表的です。その他に、否応なしに過去の出来事に類似した感覚になる悪夢を繰り返し見るという症状もあります。
よく誤解されやすいこととして、あくまでフラッシュバックは自分のなかで過去のトラウマ体験に対して感情の整理がつかず、意思とは無関係に脳に不吉な記憶が侵入して反復されることを意味します。ですので、ただ単に日常体験に伴う嫌な感情が芽生えて思い出されることと明確に区別されるべきです。
ボキャブラリー能力が未熟な幼児期の時に経験したトラウマ体験は、言語的に十分に認識できないまま記憶してしまいます。そして、それを後になって忘却することができない場合にもフラッシュバックは起こるとされています。この場合、当時の周辺の記憶はまともに意識上に存在しないため、時間軸に比例してその内容を変造したり加工することが困難になります。
3.嫌な記憶のフラッシュバックの対処法
これまで述べてきたことからも容易に想像できるように、そもそも誰しもがフラッシュバックを体験しないように衝撃的なトラウマ体験を回避することに越したことはありません。
万が一可能な範囲で環境調整を実行したにもかかわらず、トラウマの出現およびフラッシュバックの悪化を防げない場合には補足的に薬物治療を選択するケースがあります。特にフラッシュバック症状に対して抗うつ作用も有する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果が過去の医学的検証で示されています。
それ以外にもトラウマ体験に対して有効と考えられている心理的アプローチを用いた治療法としてトラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)があります。ただ、この治療をするうえでは専門スタッフの労力が過重になるのみならず、概ね1回あたり約1時間以上を要します。そのため、本邦では限られた施設でしか施行されておらず、実際のところはこの治療を受ける機会は非常に少ないかもしれません。
再び触れることが辛い過去のトラウマ体験を扱っていくことは誰にとっても非常に苦しいことです。嫌な記憶としてのフラッシュバックに向き合うためには、普段の生活に安心感があって余裕を持つことが重要です。まずは信頼できる相手と協力してトラウマ反応を認識することを大切にする必要があります。
フラッシュバックで長く苦悩している人たちが、臨床心理士やカウンセラーなどの専門職の方々とともに症状に向き合って治療して、つらい感情状態になっても自分である程度処理できる対策を学習して身に着けることができる日が来ることを願っております。
4.フラッシュバックについての相談をしたい方は
こうしたフラッシュバックはPTSDでよく起こる症状です。PTSDについて更に詳しく知りたい人は以下のページをご覧ください。
また、フラッシュバックは非常に苦痛な体験です。ですので、ただ耐えて、我慢するだけではなく、臨床心理士や医師などの専門家にまずは相談すると良いでしょう。当オフィスでもフラッシュバックについての相談を受けて受けています。相談を希望する方は以下のページからお問い合せしてください。
5.トラウマについてのトピック
文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。