【初回は料金半額】【夜22時まで開室】【土日も開室】【対面でもオンラインでもカウンセリング可】

子どものトラウマ

この世の絶望の淵に

子どものトラウマとはどのようなもので、また、それを克服するにはどうしたらいいのでしょうか。この記事では、トラウマの症状やそのきっかけ、回復に向けた治療や予防に向けた支援について説明します。

トラウマの発症や回復には親子関係をはじめ、周囲の人とのかかわりが大きく影響します。カウンセリングなどの援助も活用しながら、子どもに寄り添い回復を支えましょう。

1.子どものトラウマとは

子どものトラウマとは、どのようなものでしょうか。ここでは、トラウマの定義、子どものトラウマ反応、子どものトラウマ反応が起こるメカニズムに触れていきます。

また、そもそものトラウマやPTSDの全般的な説明は以下のページをご参照ください。

トラウマのカウンセリング・相談
トラウマとは、いわゆる「心の傷」といわれるものです。身体が傷つくことと同じように同じように心も傷ついてしまいます。そして、フラッシュバックや過覚醒、回避などのいくつかの症状が重なるとPTSDという診断になります。

(1)トラウマとは

トラウマは「心的外傷」とも呼ばれ、心身の安全が脅かされるほどの強烈な出来事がこころに残り、長期にわたって負の影響を及ぼすような心理的体験のことをいいます。

子どものトラウマは特に、脳の機能や構造の発達に影響を及ぼすといわれています。そのため、発達障害に似たようすが見られることや、思春期や成人期以降にはうつ病などの深刻な精神的な後遺症が現れる場合もあります。

子どものトラウマには、理解と適切な対応が望まれます。

(2)トラウマ反応・PTSD症状

外傷体験の後、子どもはさまざまな心身のトラウマ反応を表すことがあります。

トラウマ反応は一般的に、外傷体験の後すぐではなく遅れて(おおむね6ヶ月以内)現れ、一定の診断基準を満たす場合に「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」と診断されます。

PTSDの代表的な症状は以下の4つです。

a.侵入症状(再体験・フラッシュバック)

意図せず外傷的な出来事をくり返し思い出す、夢に見る、それが起こっているかのように感じたり行動したりする、などして苦痛を感じます。子どもの場合は、外傷体験を思わせる遊びや話をくり返す、内容のはっきりしない恐ろしい夢を見る、といった様子がみられることもあります。

b.回避症状

外傷的な出来事に関する行動や場所、人、会話などを避けたり、避ける努力をしたりします。子どもの場合、表情や会話が乏しくなる、ぼーっとするなど、普段より活動性が下がることから始まることが多いようです。

c.過覚醒症状

臨戦体制をとって身を守ろうとする反応で、常に落ち着かず興奮している状態です。激しい怒りやいらだち、過剰な警戒心や驚愕反応、自己破壊行動、集中困難、不眠、などがあります。子どもの場合、かんしゃくがひどい、泣き方がひどい、といった様子が見られることもあります。

d.認知や気分の陰性の変化

外傷的な出来事の重要な部分を思い出せない、自分や周囲の他者、世界に否定的な感情や信念を持続的にもつようになる、などの症状です。子どもの場合、遊びを含め好きだったはずのものに感心を示さなくなる、といった様子もみられます。

(3)子どものトラウマ反応・PTSD症状

そのほか、小さな子どもには以下のトラウマ反応が表れやすくなります。

a.分離不安

養育者などの愛着対象から離れる際に感じる不安をいい、養育者にまとわりつくといった行動がみられます。

b.退行

より早期の発達段階に戻ることをいいます。日常生活では聞き分けが悪くなる、指しゃぶりや夜尿の復活、食事や着替えなどできたはずの生活スキルが後退する、といった様子がみられることがあります。

c.身体症状

特に年少の子どもは、トラウマ反応が身体症状として表れやすくなります。食べない、体重が増えない、なんとなく元気がない、頭痛や腹痛、といった反応がみられます。

(4)子どものトラウマ反応が起こるメカニズム

トラウマ反応は元々、心身の安全が脅かされる危機的状況からこころを護るために生じるものです。一般的には危機が去ればこうした反応はなくなりますが、危機の衝撃があまりに強い場合や長く続いた場合などはこころの働きが心身に根づいてしまいます。

危機に適応するために生じたこころのはたらきが、平穏な日常でも呼び起こされてしまうと誤作動となり、不適応的な反応となってしまうのです。

2.子どものトラウマのきっかけ

子どものトラウマは、どのようなきっかけで起こるのでしょうか。ここでは、トラウマのきっかけになる代表的な出来事を紹介し、特に深刻なトラウマにつながる幼少期の養育不全についてくわしく説明します。

(1)子どものトラウマのきっかけとなる出来事

子どものトラウマのきっかけとなり得る出来事には、さまざまなものがあります。同じ出来事がトラウマとして残るかどうかには個人の要因も影響しますが、一般には以下のような出来事が挙げられます。いずれも心身の安全が脅かされ、逃れることができない状況です。

  • 戦争や戦闘、テロ、拷問、犯罪被害、事故、災害、他人の死の目撃
  • 家族との離別や死別、転居や転校、学校での体罰やいじめ
  • 幼少期の養育不全(身体的虐待、心理的虐待、静的虐待、ネグレクトなどの日常的な児童虐待など)

また、大人からは些細に見えることでも小さな子どもにとっては重大な恐怖の体験となる場合があります。たとえば迷子になることは、守ってくれる人を失うという生死にかかわる体験ですし、見捨てられたと感じたときの恐怖はより強くなります。このように、幼少期の愛着(アタッチメント)対象の分離や喪失は重大なトラウマになる可能性があります。

さらに養育不全がある場合は、子どもにとって守りとなるはずの愛着(アタッチメント)自体が不安定なため、トラウマがより深刻になるおそれがあります。

(2)幼少期の養育不全の影響は深刻

乳幼児期のトラウマは、それ以降に生じるトラウマよりも精神発達への影響が深刻です。特に早期から長く反復して虐待を受けた場合、脳の機能や構造に重い影響が出ることがあります。

養育不全の子どもには、以下のような様子がみられます。

a.乳児期

抱っこや愛撫などといった養育者の母性的なかかわりが不十分な場合、自分や周りへの基本的信頼感が育ちにくくなります。また身体や情動がばらばらのままでまとまらず、情緒的に混乱しやすくなるといわれます。

b.幼児期

しつけが不適切な場合、意志の力や自己コントロールの力が育まれず、持続力や実行力が弱かったり、わかっていてもルールを守れなかったりします。

c.児童期

言葉を大切にできなかったり、攻撃的な行動をみせたり、知的な力に見合わない学業不振が出たりします。

d.思春期以降

うつ病や双極性障害などの気分障害、不安障害、解離性障害、境界性パーソナリティ障害などの精神疾患などを発症しやすいといわれます。

(3)愛着障害として

極端な養育不全により子どもの症状が一定の基準を満たすと「反応性愛着障害」「脱抑制型対人交流障害」と診断がつく場合もあります。

a.反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)

苦痛が生じたとき、養育者に対しめったにまたは最小限にしか安らぎを求めず、引きこもった、抑制的な反応を示します。

b.脱抑制型対人交流障害

見知らぬ大人にもためらいなく近づいたり、過度に馴れ馴れしくしたりします。

虐待などの極端な養育不全がある場合、子どもは愛着(アタッチメント)形成の問題とトラウマが相互に関連し、複合的な問題を抱えることが指摘されています。

なお、愛着障害についてのさらに詳しい説明は以下のページをご覧ください。

愛着障害のカウンセリング・相談
愛着障害とは養育者との間で適切な愛情や接触がないことによって、対人関係上の問題が生じている障害です。反応性愛着障害と脱抑制性対人交流障害の2種類があります。また大人の愛着障害の問題もあります。愛着障害の治療には安全基地を作ることが大切です。

3.子どものトラウマの回復と予防

子どもがトラウマをケアし、また予防するには、どのようなことが必要なのでしょうか。ここでは、トラウマを抱えた子どもの回復と予防に必要な対応について触れます。

(1)子どもがトラウマから回復するには?

子どものトラウマからの回復には、基本的には精神医学や心理療法による専門的な治療が必要です。トラウマ反応が疑われる子どもに気づいたら、まずは保護者に働きかけて、地域の児童相談所やPTSD治療を行っている児童精神科など、専門家の支援につなげましょう。

トラウマからの回復に向けた支援には、以下のものがあります。

a.子どものトラウマ反応の理解

まず重要なのは、子どものトラウマ反応やPTSD症状を理解することです。

極度の不安や混乱など、周りからは異質に見える様子も、トラウマ反応として起こり得ると知っているだけで対応は変わります。周囲が戸惑わずに落ち着いて対応でき、誤解からの叱責によって事態を悪くすることも避けられます。

b.安心・安全な環境づくり

子どもの日々の暮らしを丁寧に観察して取れる手立てを考え、子どもに適した環境づくりをします。

たとえば暗闇が怖くて眠れない子どもには明かりを用意する、子どもが混乱を見せたらその場を苦しい状況ととらえて刺激の少ない場所に移る、といった配慮です。不安や恐怖を呼び起こす刺激や状況を取り除き、安心して生活できる場にすることが大切です。

c.大人との信頼関係

養育者や周囲の大人との信頼関係に支えられると、トラウマ反応が落ち着くことがあります。養育者に対しては、子どものなだめ方を身につける、愛着(アタッチメント)を形成する、といった、関係をつなぐための専門的援助が行われます。

また保育園や施設など、生活の場での保育者や職員による、生活を良くするためのケアや生き生きとしたかかわりも、子どもの人への信頼感を育みます。

子どもにはトラウマ反応だけでなく、安定して主体的に振る舞える場面もあります。そうした時間に周囲の大人が寄り添い、感覚を一緒に味わうことが大切です。

d.特別なトラウマ治療

今の生活への安心感や人とのかかわりへの信頼が育まれると、専門的なトラウマ治療も実を結びやすくなります。

トラウマ治療には、プレイセラピー、トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)、集団ロールプレイなどが用いられます。また、症状への対処として呼吸法や漸進的筋弛緩法といったストレスマネジメント法の習得も有効です。

いずれも、ばらばらになったままのトラウマ体験にまとまりをもたせ、トラウマにまつわる記憶や感情に圧倒されることなく、自力でコントロールできる状態を目指します。

トラウマを抱えた子どもの症状は深刻で、回復には長い道のりが必要です。子どもにかかわる周囲の大人や支援者には、子どもと信頼関係を築き、子どもに寄り添いながら根気よく回復を支える姿勢が求められます。

(2)子どものレジリエンスを育み、トラウマを予防する

子どものトラウマの予防において、レジリエンスという概念が注目されています。レジリエンスは弾力性や柔軟な回復力を意味し、曲がっても折れない竹や柳のようなしなやかさにもたとえられます。

同じ出来事を経験しても、トラウマ反応を生じる人と生じない人がおり、そこにはレジリエンスがかかわるといわれます。不安やストレスに圧倒されずにしなやかにこなす力であるレジリエンスが発揮されれば、トラウマの深刻化を防げる可能性があります。

レジリエンスに影響し、ストレス耐性を育むといわれるのは、周囲の人との関係です。

子どもを支える関係としてまず重要なのは、親子の適切な関係性です。しかし、親との関係に恵まれない場合でも、子どもを取り巻く大人たちのかかわりによって子どもの人生は大きく変わります。親戚、近所の人、保育士、教師など、周囲の大人が子どもを心配し積極的にサポートしてくれることも、子どもの回復力を助けます。

自分を理解しどんな時も支えてくれると思える関係を周囲の大人と築くことが、子どもがレジリエンスを発揮し苦境を乗り切る力を支えるのです。

4.子どものトラウマについて相談する、カウンセリングを受ける

子どものトラウマについて、トラウマ反応やきっかけとなる出来事、回復や予防に必要な対応を説明しました。

トラウマをもつ子どもの症状は深刻ですが、信頼できる支援者がおり、日々過ごす環境が安心できるところになれば、子どもの回復に向かう力は発揮されていきます。子どものトラウマの支援を検討する際は、是非カウンセリングもご検討ください。

当オフィスでも相談やカウンセリングを受け付けています。希望者は以下のページからお申し込みください。

カウンセリング申し込みフォーム

5.参考文献

【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
  • 詳細な紹介・経歴
社会問題
フォローボタン
心理オフィスK