概要
我が国で出版されている「ブリーフセラピー」と銘打たれた著作や論文の大半は、いわゆる家族システム理論や家族療法の系譜に属し、その枠組みの中から生み出されてきたものです。したがって、日本におけるブリーフセラピーの一般的な理解は、家族療法的な実践と強く結びついているといえます。しかし、国際的な視点から眺めると、精神分析の流れの中で発展してきたブリーフサイコセラピーもまた大きな潮流を形成しており、家族療法的アプローチとは異なる臨床理論と実践の蓄積が存在しています。この二つの流れを比較しながら検討することは、ブリーフセラピーの本質をより多面的に理解するうえで欠かせない作業です。
今回のセミナーでは、精神分析的ブリーフサイコセラピーの歴史的背景と理論的枠組み、そして実際の臨床における実践について、できるだけ具体的にお話しいたします。特に、マラン,D.H.のTCPリンクの考え方を中心に取り上げ、さらにデイバンルー,H.の理論的貢献や技法についても言及し、実際の治療過程でどのように応用され得るのかを詳しく解説いたします。また、ミルトン・エリクソンに由来する、いわゆるブリーフセラピーの系譜にも焦点を当て、その代表的な実践として MRI 型ブリーフセラピーと解決志向アプローチを取り上げます。それぞれのアプローチが臨床にどのような工夫をもたらし、治療的効果を発揮してきたのかについても紹介いたします。
さらに、本セミナーでは、精神分析的ブリーフサイコセラピーと、いわゆるブリーフセラピーの根本的な違いを明確にし、両者を単なる対立的なものとして捉えるのではなく、相互補完的に活用していく可能性についても検討いたします。そのうえで、心理臨床の現場においてどのように選択的に用い、組み合わせることができるのかを考察することで、参加者の皆さまが実際の臨床実践に活かせる具体的な視点を提供したいと考えています。
本セミナーで学べること
- 精神分析のブリーフ化の歴史
- マランのTCPリンクを中心に精神分析的ブリーフサイコセラピーの実際
- MRI型ブリーフセラピーのエッセンス
- 解決志向アプローチのエッセンスと具体的な臨床適用例
- 精神分析的ブリーフサイコセラピーといわゆるブリーフセラピーの違いと併用の可能性
講師
村尾泰弘 先生
- 所属:立正大学社会福祉学部教授、公益社団法人神奈川被害者支援センター理事長
- 資格:臨床心理士、公認心理師
- 専門領域:犯罪臨床心理学、家族療法、アートセラピー
- 出身大学院:横浜国立大学大学院教育学研究科
- 経歴:1981年3月横浜国立大学大学院教育学研究科修士課程修了。家庭裁判所調査官として少年非行や離婚など多くの家庭問題にかかわった後、立正大学 専任講師、助教授を経て、現在、立正大学社会福祉学部教授。公益社団法人「神奈川被害者支援センター」理事長、「家族相談士・家族心理士資格認定機構」理事長、日本司法福祉学会前会長。臨床心理士・公認心理師としても活動している。
- 著書:
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セミナーの紹介
配布資料の一部
セミナーの様子の一部
動画の内容
本セミナーでは、ブリーフセラピーをめぐる二つの主要な流れとして、精神分析的ブリーフサイコセラピーとシステム論的家族療法を取り上げ、それぞれの理論的背景と臨床実践の特徴を比較しながら解説しています。両者を単純に対立するものとして捉えるのではなく、それぞれが何を治療原理とし、臨床場面でどのような問いを立て、どのような介入を行うのかを整理していきます。
精神分析的ブリーフサイコセラピーについては、フロイトの初期症例を出発点とし、その後フェレンツィ、ランク、アレキサンダー、バリントらによって展開されてきた歴史的な流れを紹介しています。とくにD.H.マランの理論を基盤としたTCPリンクを取り上げ、治療状況、現在の生活状況、過去の重要な関係にみられる共通したコンフリクトをどのように結びつけて理解するのかを解説しています。
また、短期的な治療枠の中でも、無意識の意識化、転移、再現といった精神分析的な視点をどのように活用するのかについても扱っています。時間や回数が限られているからこそ、治療の焦点をどのように定め、何を扱い、何を扱わないのかを判断することの重要性についても整理しています。
システム論的家族療法を背景とするブリーフセラピーについては、問題を個人の内面だけに求めるのではなく、家族や周囲との相互作用の中で理解する視点を紹介しています。症状や問題を維持している関係の循環やパターンをどのように捉え、どの部分に働きかけることで変化を生み出していくのかという考え方を具体的に解説しています。
精神分析的アプローチが過去から現在、そして治療関係の中に繰り返されるパターンを理解していくのに対し、システム論的アプローチでは、現在の関係性や相互作用のパターンに着目します。本セミナーでは、こうした両者の違いを明確にしながら、それぞれの特徴や臨床的な強みを比較していきます。
さらに、両者を排他的なものとして捉えるのではなく、臨床状況に応じて往還したり、組み合わせたりする可能性についても検討しています。短期間の心理療法であっても転移や再現を扱うことは可能であり、同時に、クライエントを取り巻く家族や関係システムへの視点を持つことも重要です。
ブリーフセラピーは、単に面接回数を少なくした心理療法や、効率を重視した技法ではありません。限られた時間の中で何に焦点を当て、どのような理解に基づいて、いつ、どのような介入を行うのかという治療者の判断がより明確に問われる実践です。本セミナーでは、ブリーフという治療構造そのものが、治療者の焦点化と臨床判断にどのような影響を与えるのかについても考えていきます。
精神分析的理解とシステム論的視点という異なる二つの座標軸を行き来することで、個人の内的世界と、その人を取り巻く関係性や状況の双方をどのように捉えるのかを検討できる内容となっています。ブリーフセラピーの基礎を学びたい方はもちろん、精神分析的心理療法や家族療法を実践している方が、自身の臨床を異なる視点から見直すためにも役立つセミナーです。
視聴時間
約5時間00分
オンデマンド視聴期間
無期限
参加費
5,500円
- 体調不良、急用、家庭の用事など個人的な理由であってもキャンセルの場合には返金します。
- 支払い方法はクレジットカード、コンビニ払い、銀行振込、ペイジー(Pay-Easy)があります。
- 自治体などで請求書払いが必要な方はこちらの【請求書払いの申し込みフォーム】からご連絡ください。
オンライン開催
オンデマンド視聴はVimeoを用いています。視聴可能かどうかはこのテスト視聴のページをご覧ください。映像と音声がうまく再生できていればオンデマンドは視聴可能です。
参加資格
臨床心理士、公認心理師、医師、心理職、カウンセラー、精神保健福祉士、社会福祉士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、看護師、保育士、教師などの資格をもつ対人援助の専門家、大学院生、一般の方など。ブリーフセラピーや家族療法、精神分析などに興味を持っていればどなたでも参加可能です。
臨床心理士更新ポイント
臨床心理士の更新のためのポイントを2条(4)の項目(2ポイント)で申請する予定です。また、オンデマンド視聴でもポイント取得可能です。
申し込み期日
無期限
参加方法
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