「まんが サイコセラピーのお話」を読んで

こころの声が聞こえる

フィリッパ・ペリー(物語) ジュンコ・グラート(絵) 鈴木龍(監訳) 酒井祥子・清水めぐみ(訳)「まんが サイコセラピーのお話 Couch Fiction」 金剛出版 2013年を読んだ感想を書きました。本書はカウンセリングのプロセスをマンガで表現しています。特にカウンセラーとクライエントが実際にはカウンセリングの中では語らないホンネが描かれているところが非常に興味深いところです。

1.カウンセリングの技法

このようにサイコセラピーや心理療法、カウンセリングのプロセスをマンガによって表現するというのは極めて珍しいことではないかと思います。その着眼点には感嘆します。

本書は、基本的には精神分析的・精神力動的な観点のセラピーやカウンセリングですが、柔軟にその他の技法を取り入れています。例えば、感情リストを使った認知行動療法的アプローチであったり、今ここの感情的な気付きを促すゲシュタルトセラピーであったりしています。

2.カウンセラーとクライエントの心の中

そして、そうした技法は使いつつも、カウンセラーとクライエントが実際に話している言葉と、心の中で思っていることを同時に提示し、本当のところで何が起こっているのかが視覚的に、直感的に分かるようになっています。

こういうことはやはり文字だけの文章では表現しきれないだろうし、マンガという表現方法によって見事に描き出されています。それは、カウンセラーの逆転移であったり、クライエントのカウンセラーには話さない本音であったりします。

3.カウンセリングでの失敗の意義

また、カウンセラーも完璧ではなく、驕ったり、つまづいたり、先を急ぎすぎたりというような失敗がいくつも描き出されています。しかし、そうした失敗ということがカウンセリングの完全な失敗ということではなく、必然的にカウンセリングプロセスに起こる出来事の一つに過ぎないということが分かります。

その出来事を如何にとらえ直し、セラピューティックに扱っていくのかに意義があるように思います。そうしたことも本書では描かれていると思います。

4.日本と欧米の言語の違い

あと、本筋とは関係ないかもしれませんが、日本におけるマンガは特別な場合を除いて、ほとんどの場合が右から左に読み進めていくようになっています。しかし、本書は言語の関係からか、左から右に読み進めていくようになっています。その点、日本のマンガに馴染んでいる人は、意外と本書の左から右という形式のマンガは違和感があるのではないかと思います。

その他に、数多くの注釈や説明が文章として下部に書かれています。それらは本書やストーリーを理解していく上で欠かせないものではありますが、それを読んでいると、マンガの良さであるスピードにのった読み進め方ができないのが残念なところです。

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