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夢解釈

夢は無意識への王道

S,フロイトの1900年の非常に有名な論文「夢解釈」についての要約です。夢を無意識の探索の道具とし、夢を解釈することにより、精神分析の技法を確立しました。

本論文はフロイト全集〈4〉1900年―夢解釈11900年――夢解釈II (フロイト全集 第5巻)に収録されています。

1.論文の背景と意義

「夢には実際に意味がある。そして夢判断の学問的方法と言うものは可能なのだ」

ヒステリー治療から得た解釈の方法を夢に適用してみたらどうかとフロイトは着想した。

イルマの注射の夢の分析(1895)、父の死(1896)、自己分析(1897)を経て、夢の考察を経て精神分析に固有の解釈の技法を発見した。

2.夢判断の方法

夢は判断され解釈されうるものだ。「夢を解釈する」とは夢に意味を与えることになり、我々の心的諸行為の連鎖の中へ、夢を完全な同資格の一項として繋ぎ合わされ組み入れられるところのあるものによって置き換えることを意味する。

(1)夢判断の方法

「頭の中に浮かんだこといっさいを観察して包みかくさず報告する」批判を抑止して自己観察をする

1つ目の条件として、ひとつのまとまった全体としての夢でなく夢の内容の個々の部分部分だけを注意力を対象にする。部分部分に砕いて一連の思いつきや考えを報告する(民間の象徴による夢判断とは異なる)

2つ目の条件として、全体的判断ではなく部分的判断(解読法同様)、また、夢はそもそも合成物、心的諸形成物の混合体として捉える。

(2)イルマの注射の夢

1885年夏に親しい間柄の若い婦人(イルマ)の精神分析が中断となった後同僚から報告を受けたその晩の夢。個々の夢の中の出来事や考えを分析して、その意味を二重三重に理解していく。

結論として、夢は、現在のイルマの苦痛に対しては私には責任はないということ、その責任はオットーにあること、オットーへの復習、DrMはこのケースについては無知であるということを主張していた。

夢は決して支離滅裂な脳活動の表現ではなく、夢の内容はある程度願望充足であり、夢の動機はある願望である。

3.夢は願望充足である

夢は必ず願望夢なのか?

直接の願望の例:喉が渇いたFが見た夢→水を飲む夢→エトルリアの骨壺から水を飲む→塩辛い感覚刺激と対応→目を覚ます

慣用句的表現は夢の意味への最短距離「夢にも思い及ばなかった(願ってもないことである)」

4.夢の歪曲

いっさいの夢が願望充足を目的とするなら、なぜ苦痛や不快が優勢な夢を見るのか?問題は夢の顕在内容ではなく、分析の仕事によって夢の背後に発見されるところの夢の本当の意味(潜在内容)に関するもの。

(1)疑問1

苦痛夢や恐怖夢がどうして願望充足(快楽の夢)でありうるのか?

(2)疑問2

なぜ初めから願望充足という性格をあからさまにしないのか?(夢歪曲はなぜ?)

(3)大学教授の夢

ライバルR,Nの像に、教授に任命されない特性を与えて自分は違うので十分な可能性があることにしたかった。さらに、夢の中で感じた親愛の情は、潜在内容に対立的なものであり、偽装である。

夢の形成における二つの力は願望と願望に検閲を加え、(意識への入場を統制し)表現に歪曲を強制するもの。

⇒「意識すること」と「表象すること」は別過程

「夢はある(抑圧され・排斥された)願望の(偽装した)充足である」

5.夢の作業

課題:潜在内容(夢思想)と顕在内容(夢内容)の関係、その変成過程の探求

(1)圧縮作業

夢作業の第一の契機である。

夢内容は、その背後に隠れた思想の心的材料に大変な圧縮が加えられ省略・簡素化される。日中印象が要素として採用、思想との接触可能で多義的解釈可能な連想結合がなされる。抑圧された欲望・性的空想等のテーマが推敲され体験・記憶等多面的重層的代弁者をもつ。圧縮作業の特色は、様々な夢思想要素からの選択、新たな統一的形象の形成(総合人物、混合形成物)、中間的共通者の制作、言語圧縮等である。

(2)移動の作業

夢作業の第二の契機である。

夢内容は夢思想とは別の中心点をもち、本質的要素より価値の低いものを採用することもある。夢の核心からは遠い観念が夢内容と夢思想を結び付ける。個々の要素の心的強度の転移・移動が行われる~心的検閲の影響による歪曲達成の主要手段である。

(3)夢の表現手段のいろいろ

夢判断時の様々な過程を一瞥する。

夢思想間の論理的関係は夢の中に表現されない、知的作業でなく心的素材表現である。夢素材中の表現至難な諸関係の暗示手段:同時性表現/因果関係表現/類似性・合致・共通性を統一性へ集結/逆転・反対物への転化/形式は隠蔽表現に利用/体の麻痺・阻まれ感は「否」等である。

(4)表現可能性への顧慮

象徴形成・視覚化:夢作業の第三の契機である。

思想の言語表現の取り換え(置き換え・交換)がなされる。抽象的な表現が形象的・具象的表現へと置き換えられ、視覚的表現が優先される。

(5)夢における計算と会話

上記三要素証明のための実例を提示している。

夢作業は計算などはせず、材料の暗示に役立つ数字を計算の形で総括し並び立てる。文句・会話を創造せず、実際会話や聞いた文句を思想中から借用し編成組み合わせ意味を付与する。

(6)荒唐無稽な夢―夢における知的業績

夢の無意味性への反論について。

夢の荒唐無稽性は表面だけのもので、その外観は夢見る本人が欲したもの。夢中の判断行為は思想中に存在する先例の繰り返し。

(7)夢の中の情動

夢に現れる情動と夢思想の諸情動との比較。

夢の情動は検閲の抵抗に屈服せず、表象内容が移動・代理作用を受ける。夢検閲の影響は受け、情動抑制、情動逆転、反対物への置き換えあり~自己批判的刑罰夢。

(8)第二次加工

夢形成の第四の契機である。

心的検問の内容の制限、削除、添加により、不合理や支離滅裂さを筋の通ったものに加工。第二次加工による細工が行われた部分は、夢の明晰な部分である。

(9)夢形成のプロセス

潜在夢

↓(日中残滓物)

第一検問

↓(夢作業/圧縮・移動・視覚化)

第二検問

↓(第二次加工)

顕在夢

6.夢の忘却について

前章までの夢の分析を基に、後に局所論と呼ばれる「意識」と「無意識」の間に遮蔽板のように「前意識」が存在しているという心的システムについて論じている。また、ヒステリーについての研究から導き出された一次行程・二次行程という心的行程と抑圧を夢という観点から再検討している。

想起した夢は隙間だらけであり、更に再現を試みる際に、その隙間を恣意的に選んだ素材で満たしてしまうため夢の実際の内容の判断は不可能という警告がされることがある。夢は再現の段階になって忘却や歪曲により加工される(二次的な夢の加工)が、これは想念の段階から検閲によって起こる夢の加工の一部である。夢が語られた際に、もう一度その話を繰り返すように頼むと、表現が変わる箇所が表れることがある。その箇所が夢の偽装の弱点であり、夢を分析する仕事はそこからとりかかる。忘却の大部分は抵抗の働きによって起きるものであり、忘却から掘り起こされた夢の部分は常に重要である。夢の解釈は常に一気には完成しないものであり、ほんの些細な特徴を活用せずには、解釈はできない。

7.心的システムと夢

心的活動は基本的に刺激から出発し神経支配で終わる。知覚を受け取るシステムから運動のシステムへと推移する。これだけでは単なる反射システムであるが、刺激はただすり抜けるだけなくて、記憶の中で結びつきあう。夢からこのシステムを眺めると、一機関がもう一方の機関の活動を批判し、その結果、意識化からの排斥が起こることを想定しなければならず、前意識のシステムが想定される。日中は、運動へと興奮は流れていくものであるが、夜になると逆戻りするもの(退行)が出てくる。日中の生活の中で前意識の検閲により抑圧された興奮(日中残余)は、無意識システムの抑え込まれた想い出(大体は幼児期のもの)が引力となり退行の方向へ引きずり込まれ、表象に強度が転移されたり変形したりすることで夢が形成される。無意識的欲望が侵入してくることは眠っているものを覚醒させてしまうが、同時に前意識システムが眠りたいという手放すことのない願望を有しており、この両者の欲望が互いに折り合いのつく限りにおいて、夢が無意識の興奮を再び前意識システムの支配下に戻す役割を果たしている。夢は安全弁であり、睡眠を保証するものといえる。

8.一次行程・二次行程と抑圧

無意識は一次行程に支配されている一方で、前意識と意識は二次行程に支配されている。

一次行程は原始的な心理過程。興奮量が自由に流れており、ただ欲望することしかできない。いとわしい事柄を思考の連関の中に引き入れる能力が欠如している。知覚同一性を作り出そうとするもの。最初から心的システムの中にある。

二次行程は不快の生起へと向かう流出が阻止されるように抑止し、知覚同一性を修正するように機能する。思考同一性の獲得をめざすもの。思考全体は迂回路であり、目標表象とされた満足の想い出に始まり、その想い出に対して同一の充当をなす。人生の経過の中で次第に形成されるもの。

夢の形成には、この二種類の心的行程が関与する。「二次的思考の仕事(二次行程)の成果である想念が一次的心的行程(一次行程)の手に落ちる」結果として夢やヒステリー症状が現れる。一次行程の手に落ちるのは、抑圧により追い出されるためである。幼児的であり前意識から引き離されていた思い出の宝庫が抑圧の前提条件である。幼児的なものに由来し抑止しがたい欲望興奮のうちある種の興奮を充足させると、二次的思考による目標表象との矛盾関係が生じ、快情動ではなく不快情動が呼び起される、この情動変化が抑圧の本質をなしている。

9.夢解釈についての議論

夢解釈は、この後、フロイト自身の手により何度も改定が行われた論文であり、思い入れを強く持って書かれたものと感じた。後年の構造論へ通じる前意識システムの発見はこれから先のフロイトの理論展開にとって重要なものであったと思われた。

面接内における夢の扱いについて。普段のカウンセリングの中で、夢が報告されることもあるが、扱いに苦慮することがある。夢の報告・解釈が経過の中で意味を持ったという御経験から感じられたことがあればうかがいたい。

精神についてのFのモデルの多くの部分が夢と精神神経症との間の相互参照の上に基礎づけられているために、片方を失えばもう片方も支えを失って倒れてしまうというディレンマに陥り1925年に至るまで改定を続けなければならなかったとメルツァーは言っていますが、Fの着想の上にその後の批判や発展があることを思うと改めて偉大な人であったと感慨深い。

フロイトの熱意と葛藤~自身の夢への探求心、親族・出自との関連発見とその公表への躊躇。

夢の機能・目的が「願望充足」に集約しうるものなのかどうか→臨床場面への応用方法は?

EMDRのメカニズムとの類似性はどうか~眼球運動とレム睡眠+視覚映像の受容という機能?

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