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公認心理師現任者講習会に参加して-後篇-

 2018-03-19から2018-03-23まで渋谷において国際心理支援協会の主催で開催された公認心理師現任者講習会に参加しました。ここでは5日目(司法に関する関係行政論と公認心理師の職責)と全体の感想を書いています。

目次

  1. 公認心理師の役割と業務
  2. 心理をしらない公認心理師
  3. 公認心理師における「指示」
  4. 心理としてのアイデンティティ

 公認心理師現任者講習会の前篇(1日目・2日目)中篇(3日目・4日目)に続いて、最後の5日目と全体についてとして後篇を書きました。

1.五日目の午前:司法に関する関係行政論

 公認心理師現任者講習会5日目。本日でようやく終わりです。午前中は司法・犯罪領域の法制度についてがテーマでした。少年法外部リンク犯罪被害対策外部リンク裁判員裁判外部リンク、離婚における児童の権利などが取り上げられました。開業でも犯罪や司法がらみのケースはそこそこあるので、アバウトにでも法制度は頭に入っていたようでした。その知識の補完はできたように思います。

 事例については内2つはPTSD摂食障害外部リンクであり、医療の範疇に近いのではないかというものでした。医療でやっていれば馴染み深い事例です。ここでの医療との連携が重視、奨励されるのは言わずもがなです。しかし、ちょっとこだわりがある、社交性に欠ける、だけで発達障害としてしまうのはどうなんでしょう。このままだと、定型発達より発達障害の割合が5割を超えてしまいそうです(笑)。人との関わりが薄かったり、内に籠ることを望んだりする人や児童は多いです。それを全て発達障害と診断し、その上、人との関係を作りましょう、などとSSTをするというのはナンセンスです。また犯罪をした人が発達障害だからといって、発達障害が犯罪の原因ではないことも当然のことです。

 公認心理師現任者講習会5日目の昼食。豚トロ定食を食べました。やや塩辛いがスタミナが戻るような美味しさでした。

豚トロ定食

2.五日目の午後:公認心理師の職責

 公認心理師現任者講習会5日目の午後は公認心理師の職責についてでした。公認心理師の業務や倫理、信用失墜行為外部リンク、守秘義務、多重関係などが取り上げられました。公認心理師の業務の4つ目に健康教育などの啓発についてがきています。講師は公認心理師からできたと言ってましたが、臨床心理士の業務の3つ目の臨床心理地域援助の中に既に含まれているのではないかと思います。

 また、倫理については、こうしたことで公認心理師を縛り、クライエントに害を及ぼさないように防止し、それを犯した人から資格を取り上げるために必要なことです。また、倫理は単にしてはならないこと、というだけはなく、臨床で困った時の指針になりうる技法の側面でもあります。なので、やはり大事です。

3.公認心理師現任者講習会から推定される公認心理師像

(1)公認心理師の役割と業務

 公認心理師は、国や法律から何を求められているかが明確に分かったのは良かったです。最低限の知識を持ち、連携をメインに行う、繋ぎ屋さんという役割を課せられているようです。心理療法やカウンセリング等のように、クライエントとの濃密な関係で実施していくことは少ないのかもしれません。

 おそらく、そうした心理療法やカウンセリングをするのは、公認心理師のメインの役割ではないのでしょう。プラスアルファの訓練と資格ある各種の学会認定資格などが担っていくことになるでしょう。明文化されたものではありませんが、基礎資格としての公認心理師とその上位資格としての学会認定資格という、二階建て方式に今後なっていくと予想されます。つまり、医師と専門医との関係に近いような制度設計になっていくと思われます。

 また、公認心理師は生涯学習の理念が盛り込まれているとはいえ、更新制度はなく、各自の努力にお任せされている。なので、公認心理師を取った後も努力し続ける人としない人との格差は大きく出てくるだろう。現任者として公認心理師をとった世代は後から酷評されないように自己研鑽をしていかないと。

(2)心理をしらない公認心理師

 そもそも、看護師やPSWが公認心理師も取れるから取っておくが、特に心理の仕事はしない、という人も多くいるようです。PSWができた時に心理も取った人がいたのと同じように。あとは設置基準を満たすため、設置加算を取るためだけに、所属長から取らされた人もいるかもしれません。そうした人は取って終わりで、名前だけ公認心理師というものありえます。

 公認心理師は基礎の基礎資格。最低限の資格です。しかも、それを持っている人のバックグラウンドがかなり違います。心理を学ばず週1回ボランティアで相談まがいのことをしてる程度であるにもかかわらず、テキスト丸暗記できれば合格して名乗る人も出てくるでしょう。

 ですので、ユーザーも、公認心理師を持っているだけで技能が担保されているとか、保証されているとか、安心だとか思わない方が良いでしょう。相談先の公認心理師が、他に何の資格を持っているか、訓練をどう受けてきたのかなどを確かめる方が良いと思います。

(3)公認心理師における「指示」

 公認心理師の職責の講義のところで「医師の指示」についてが取り上げられました。おそらく試験に出るだろうとのことでした。ちなみに、「医師の指示」についてですが、診療補助職であれば「指示」になるが、そうでなければ「指導」となります。公認心理師は診療補助職ではないにも関わらず「指示」となっているのは矛盾といえます。「指導」よりも「指示」の方が拘束力は強いです。それが医療以外の、教育、福祉、司法、産業、開業でも「指示」の範囲が含まれるので、良くも悪くも今までなかった運用になるでしょう。医師の方も医療外のことまで責任を取らされるのは大変なのではないかなと思いますが。

 この、さんざん論議され、批判された「医師の指示」ですが、実際の運用でどうなるか、特に開業がしばられないか、については今後注視していかねばなりません。あまりにも縛るものとして運用されると、開業としてはたまったものではないので、そうなったらどこかのタイミングで、ユーザーの利益のために公認心理師返上を考えねばならないこともあるかもしれません。

 「医師の指示」が柔軟に運用され、妥当な連携程度になっていくのであれば問題はないでしょうが。そして、あまりにもおかしなことをする公認心理師がいたとしたら「医師の指示」によって制御できるとするなら、それはそれでユーザーの利益にもなるでしょう。現任者として公認心理師を取る人の中には、全く心理の勉強もなく、テキストの丸暗記だけで資格取得する人もいないとは限らないので、そうした人を制御する機能として「医師の指示」は意味があるかもしれません。

(4)心理としてのアイデンティティ

 あとは2018-09-09の公認心理師資格試験のみです。今のところ、取ることは取るつもりですが、それによる恩恵はあまりなさそう(公的機関などに就職しないから)ですし、アイデンティティにもならないかもしれません。当面は臨床心理士というアイデンティティの方が強そうです。その臨床心理士もゆくゆくは捨て去り、心理療法家というアイデンティティになっていきたいものです。

 もしくは、今後の訓練もあるが、精神分析家という方向に進めたらと思います。最後には資格ではなく、自分というものがそれだけで規定されるアイデンティティになっていくのが理想の境地でしょうか。

4.公認心理師現任者講習会についての感想

  1. 五日目の午前:司法に関する関係行政論
  2. 五日目の午後:公認心理師の職責
  3. 公認心理師現任者講習会から推定される公認心理師像

    (1)会場

     部屋に400人がすし詰めで、3人掛けテーブルに3人座るので圧迫感があり、息苦しさが非常に強かったです。30時間もいるのだから、もう少し配慮があると良かったと思います。2人掛けにすると受講できない人も出てくるし、売り上げも落ちるから難しいのかもしれません。

     椅子は硬いと聞いていたので携帯用クッションを持参しました。長時間座っているとペチャンコになってしまいましたが、無いと有るでは相当違っていたように思います。腰痛の悪化が最小限に抑えられました。悪化は悪化しましたが。

     席は自由だったのが良かったです。しかし、そのせいか開始1時間以上前から受付には長蛇の列で、良い場所(端っこやスクリーンの前など)は既に早い人に陣取られていました。しかし、指定席で、一番前になってしまうリスクを考えると、これで良かったのかなと妥協します。

     最終日の修了証をもらって帰る際、400人が一斉に動くと混乱するので、それをスムーズにする工夫と配慮をしていたところは非常に良かったです。これによって、早くに帰宅できたので助かりました。帰宅といってもオフィスに戻って、そこから仕事だったのですが。

     しかし、この講習会では400人が参加しました。講習費が65,000円で、26,000,000円の売り上げになります。部屋代が1日744,000円が5日で3,720,000円。講師代1時間30,000円として30時間で、900,000円。スタッフ時給1,500円として、30時間で10人で、450,000円。その他の費用が300,000円として、経費がおよそ5,370,000円。約20,000,000円の利益となりますか。概算ですが、凄いですね。

    (2)グループ討議

     恐ろしく眠気に襲われるというDVD講義は全くなく、全て生講師による生講義でした。これは非常に良かったです。テキスト読み上げが多い講師と少ない講師、グループ討議が多い講師と少ない講師がおり、このへんは講師に裁量が任されているように思いました。

     グループは5日間通して10人と一緒になりましたが、その内の7人が臨床心理士で、残り3人は臨床心理士なしで相談業務をする人でした。サンプリングの偏りもあるかもしれないが、臨床心理士率は割と高めなのかもしれません。

    (3)集団ヒステリー

     長時間同じ人と密閉空間におり、情報遮断され、同じ苦行に取り組むと、たいてい類催眠状態や軽躁状態になります。集団ヒステリー一歩手前と言っても良いかもしれません。最終日はそうした雰囲気でした。これを知っていると一歩引いて冷めた目で見てしまいます。

     講師が宗教っぽいと言ってましたが、ある種の新興宗教、カルト宗教はこれをもっと先鋭化させて使用しているのは確かです。しかし、知っていると驚くほど冷静になるものだと体験的に分かったのが良かったです。

    5.終わりに

     丸々1週間を使って参加した公認心理師現任者講習会ですが、終わってみれば、公認心理師というものがどういう資格なのかが良く分かったというのが得られたことです。講習会で取り上げられた知識については、経験者であればよく知っていることばかりなので、そこまで講習会で学べることは多くないでしょう。あまり心理を知らない人や初学者には勉強になるかもしれません。

     この公認心理師現任者講習会では忍耐が試されました。もしかしたら、その忍耐力を測るテストだったのではないかと思うぐらいです。学ぶことは嫌いではありませんが、同じ学ぶならもう少し現場で役に立ち、かつ興味をそそるようなセミナーに行きたいものです。

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公開:2018-04-02 更新:2018-05-14
研究会  北川 清一郎

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