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優しさを苦痛に感じるクライエントについて

 人の優しさや人との交流といった一見は肯定的なことを苦痛に感じてしまう一群のクライエントがいます。そうしたクライエントに対する対応やカウンセリングについて書いています。

目次

  1. 苦痛となる肯定的な関係
  2. アセスメントの重要性
  3. 幼少期の傷つき
  4. 心に占める空虚感

1.苦痛となる肯定的な関係

 カウンセリングというと、話を聴き、気持ちを共感し、思いを理解して、肯定的な関係を作っていく、という一般的なイメージがあるかもしれません。比較的健康なクライエントであれば、そうしたことによって整理され、前向きな気持ちになって前進することができるでしょう。しかし、一方で、そうした思いを聴く行為を侵襲と感じ、肯定的な関係や交流を苦痛と感じるクライエントもいます。

 そうしたクライエントに親身さこそ正義とばかりに共感性や肯定的な関心を向けることによって、クライエントにとっては傷付きとなってしまうこともある、ということを知っていることは特に重篤なクライエントとのカウンセリングでは必要なことです。

2.アセスメントの重要性

 こうした重篤なクライエントのカウンセリングするためには、まずはアセスメントが必要です。そして、その上でのカウンセリングで何を目的にし、何を行うのかといった同意(契約)が必須となります。そして、意識的なニードだけではなく、無意識的なニードを把握することがカウンセリングの初期の作業になるでしょう。

 こうした作業をいきなりすっ飛ばして、いきなりカウンセリングに入るのはリスクを孕んでしまいます。これまでのケース発表などを聞いていると、アセスメントと同意(契約)を有耶無耶にしたままカウンセリングをしているカウンセラーは結構多いように思います。

3.幼少期の傷つき

 親密さを侵襲と体験する人は、全てではありませんが、多くは幼少期に発達にそぐわない環境からの侵襲を被っているように考えます。そのため、環境や周りの人間関係に対して信頼感よりも不信を持っています。そして、スキゾイド的な在り方や解離を用いて身を守らざるを得なくなります。もしくはピエロ的な振る舞いを通して、一見は社交的で明るいが、本質的なところでは人との関係を拒絶している人もおられます。

 彼ら彼女らにとっては心を開くことは、すなわち外傷の反復という危機的状況に陥ってしまうため、不安と恐怖に駆られます。そのため、易々と人との関係を作るなんてことはできなくなってしまいます。せいぜい、仮面を作って、表面的な適応をし、本当の自分は隠して付き合う程度でしょう。

4.心に占める空虚感

 そうした防衛によって、社会生活はそこそこ送れたとしても、常に不安と空虚感が付きまとい、人生を生き生きと楽しめず、心があたかも死んでいるようになってしまいます。もしくは、死んでいるかのようにしか生きることができなくなってしまいます。世界は色あせ、虚しさが心を占めます。

 いわゆるアダルトチルドレンと言われる方々にはこうしたことに当てはまる方が多いかもしれません。

 こうしたクライエントに親切心であっても無闇に近くことはただ単に不安を煽り、傷付きを深めてしまう結果となるだけでしょう。こうした意味で、精神症状は軽くても、非常に重篤な問題を抱えた対応困難なクライエントである、と言えます。そして、神経症レベルの健康度の高いクライエントとは違う対応や方法を弄することが求められます。そして、そうであると分かるためのアセスメント能力が必要となるのでしょう。

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公開:2019-01-23 更新:2019-01-23
論考  北川 清一郎

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