概要
本セミナーでは、自己愛性パーソナリティ障害をはじめとする病的自己愛について、精神力動的な観点から患者理解、転移・逆転移の理解、そしてそれらに基づく治療戦略について講義します。近年、アメリカでの調査によると、自己愛性の病理を抱える人の割合は年々増加傾向にあり、入院治療・外来治療のいずれにおいても大きな問題となっているようです。
日本においても、控えめで自尊心が低いように見えながらも内には尊大な空想を抱き、他者を見下している人や、過度に理想化された対象の期待に応えようと必死になっている人、他者の目を過剰に気にしながら称賛を切望する人、一見社会的には適応しているものの、内面では不十分さや孤独感と常に闘っている人など、自己愛の問題を抱えるクライエントは臨床現場で多く見受けられます。
しかしながら、病的自己愛の治療は困難である場合が少なくありません。その理由は、自己愛の問題が正常な範囲から精神病水準に至るまで幅広いスペクトラムを持ち、その人のパーソナリティがどのような水準で機能しているかによって、症状の現れ方や治療関係の質が大きく異なってくるためです。
本セミナーでは、受講者が多面的な自己愛の臨床的特徴(どのような転移・逆転移が生じやすいかなど)について理解を深め、オットー・カーンバーグを中心に発展してきた転移焦点化精神療法の理論と技法に基づいて、病的自己愛に関するケースフォーミュレーションと治療戦略を検討できるようになることを目指します。
本セミナーで学べること
- 病的自己愛の多面的特徴の理解
- 病的自己愛をめぐる転移・逆転移の理解
- 病態水準に応じた治療戦略の構築
- 転移焦点化精神療法の理論と技法
講師

- 所属:開智国際大学国際教養学部・学部長、南青山心理相談室
- 資格:臨床心理士、公認心理師、博士(精神分析学)、精神分析家(NAAP認定)、TFPセラピスト(国際TFP協会認定)、BGSP国際フェロー、日本TFPコーディネーター(国際TPF協会)
- 経歴:早稲田大学教育学部卒、早稲田大学大学院文学研究科修了後、教育・医療領域で臨床心理士として勤務。2006年から米国ボストンにあるBoston Graduate School of Psychoanalysisの博士課程(臨床精神分析コース)にて精神分析家(modern psychoanalyst)としての訓練を受ける。2011年帰国後、現職場で勤務し始め、2019年からColombia University Center for Psychoanalytic Training and ResearchにてTFP(転移焦点化精神療法)の訓練を開始。TFP New Yorkインスティテュートを経て、TFPセラピストとなる。現在、国際TFP協会Teacher & Supervisorの訓練を受けている。
- 訳本:
セミナーの紹介
レジュメの一部
セミナーの一部
動画の内容
本セミナーでは、開智国際大学・南青山心理相談室の鳥越淳一先生を講師にお迎えし、自己愛性パーソナリティ障害をはじめとする病的自己愛について、精神力動的な観点から多面的に取り上げています。病的自己愛の理解から、その中核にある誇大自己、転移焦点化精神療法(TFP)の治療戦略と主要技法、治療場面で生じる転移・逆転移までを体系的に解説しています。
まず、正常な自己愛と病的自己愛の違いを整理し、病的自己愛を単に「自信が強い」「自分を特別だと思っている」といった特徴だけで捉えない視点を紹介しています。病的自己愛には、誇大性や特権意識、搾取性といった側面だけでなく、条件付きの自尊心、自己隠蔽、他者の価値下げ、強い怒りなどの脆弱な側面も含まれます。表面的には自信に満ちて見える人も、控えめで傷つきやすく見える人も、その背景には誇大性と脆弱性が複雑に関係していることを解説しています。
また、「誇大型」「脆弱型」といった臨床像を具体的な事例から検討し、同じ自己愛性パーソナリティ障害であっても、その現れ方には大きな違いがあることを取り上げています。さらに、DSM-5の診断基準だけでは捉えにくい異質性や重症度の問題にも触れ、パーソナリティ機能や人格構造という観点から病態水準を評価する考え方を紹介しています。病的自己愛を、高水準のものから境界性人格構造、悪性自己愛まで連続的なスペクトラムとして理解する視点も示されています。
治療については、オットー・カーンバーグらによって発展してきた転移焦点化精神療法(TFP)を中心に取り上げています。TFPでは、症状だけではなく、防衛、不適応な自己・他者表象、アタッチメント、メンタライゼーションなど、その人の心的構造そのものに働きかけます。治療枠と限界設定を明確にしながら、治療関係の「今、ここ」に現れる分割された自己表象と他者表象を理解し、統合へとつなげていく考え方を解説しています。
具体的な技法としては、自由連想、無意識過程への注目、転移分析、逆転移の活用、技法的中立性など、精神力動的心理療法の基本的な技法を紹介しています。なかでも、患者の語りを明確にする「明確化」、言語的な内容と非言語的な反応などの矛盾を扱う「直面化」、その背後にある無意識的な意味や葛藤を検討する「解釈」という流れを通して、治療関係の中で何が起きているのかを理解する方法を具体的に扱っています。
さらに、病的自己愛の治療で特に重要となる「誇大自己」をどのように扱うのかについても詳しく解説しています。理想化と価値下げが繰り返される背景には、他者と本当に結びつくことへの不安や、自分自身の不完全さに伴う恥・屈辱を回避しようとする力動があることを捉え、誇大自己を単に否定するのではなく、それがどのような心理的機能を果たしているのかを理解していきます。
自己愛性障害の治療で生じやすい転移・逆転移も、本セミナーの大きなテーマです。セラピストが理想化されたり価値下げされたり、「自分は必要とされていない」「臨床家としての力量を否定された」と感じたりすることがあります。こうした強い逆転移を単なる治療の妨げとして排除するのではなく、患者の内的世界や対人関係を理解するための重要な情報として、どのようにコンテインし活用するのかを検討しています。
病的自己愛を「傲慢な人」「傷つきやすい人」といった表面的な特徴だけで判断せず、誇大性と脆弱性、人格構造、自己と他者の表象、転移・逆転移を含めて立体的に理解することが、本セミナーの中心的なテーマです。自己愛の問題を抱えるクライエントへの理解を深めたい方はもちろん、精神力動的なケースフォーミュレーションや、治療関係そのものを活用した介入について具体的に学びたい方にも役立つ内容となっています。
収録時間
約5時間00分(個人ワーク含む)
オンデマンド視聴期間
無期限
参加費
5,500円(税込)
- 体調不良、急用、家庭の用事など個人的な理由であってもキャンセルの場合には返金します。
- 支払い方法はクレジットカード、コンビニ払い、銀行振込、ペイジー(Pay-Easy)があります。
- 自治体などで請求書払いが必要な方はこちらの【請求書払いの申し込みフォーム】からご連絡ください。
オンライン開催
オンデマンド視聴はVimeoを用いています。視聴可能かどうかはこのテスト視聴のページをご覧ください。映像と音声がうまく再生できていればオンデマンドは視聴可能です。
参加資格
臨床心理士、公認心理師、医師、心理職、カウンセラー、精神保健福祉士、社会福祉士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、看護師、保育士、キャリアコンサルタント、教師などの資格をもつ対人援助の専門家、大学院生、一般の方など。
自己愛や精神分析などに興味を持っていればどなたでも参加可能です。
臨床心理士更新ポイント
本セミナーは、ライブ配信・オンデマンド視聴のいずれも、臨床心理士資格更新における2条(4)の項目(2ポイント)に関する研修機会として取り扱っています。資格更新に必要な参加証明等の手続きについては、受講された臨床心理士の方へご案内します。
申し込み期日
無期限
参加方法
- 下の「セミナーに参加する」ボタンを押す
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