「新装版 信念と想像 精神分析のこころの探求」を読んで:現代におけるエディプスコンプレックスの再定式化
ロナルド・ブリトン(著) 松木邦裕(監訳)古賀靖彦 (訳)「新装版 信念と想像:精神分析のこころの探求」 金剛出版 1998年/2016年についての感想です。
ながらく絶版であった、ブリトンの信念と想像が新装版で再版されたので、さっそく購入して読みました。ポストクライン派精神分析ということで、もちろんクラインやビオンを下敷きにしているので、それらの精神分析理論をある程は知っていないとなかなか理解しずらいかな。
さらにクライン派だけではなく、ウィニコットやバリント、アブラハム、フェレンツィなんかにも言及している。さらにさらにワーズワースやミルトンなどの文芸から精神分析的な理解を深めているので、相当の教養が必要かも。
内容について、論究できるほど理解はできてないですが、フロイトに始まるエディプス・コンプレックスの現代的な捉え直しや臨床での活用は非常に魅力的。二者関係から再び三者関係に戻り、その橋渡し的な観点があるのかと。
またビオンのPs-Dの移ろいに発達的視点を導入し、DからPsへの移行は単に退行しているだけではない、という理解は秀逸。螺旋的な進展は臨床や分析をしていると、至極納得できます。
最終章の「公表の不安」では、新たな論考を発表する際に如何に既存のパラダイムとの対決を経験するのか、という論点。やや迫害的に体験してしまいやすい状況でもあるのかもしれませんが。しかし、迫害的ではなく、去勢不安という視点もまたあるのかと。
去勢不安を乗り越え、エディプス・コンプレックスを全うすることは、こころの成長という意味では極めて重要。まぁ、そこまでパラダイムにチャレンジするほどの論考を発表するほどの力は私には無さそうですが。それでも発表する際は非常に迫害的不安、去勢不安を刺激されますね。
本書とは関係ないですが、ポストクライン派の三傑といわれる中で、ブリトンとスタイナーはそれぞれ数冊ずつではありますが、訳本が出ています。最後のフェルドマンの訳本てまだ邦訳はなかったですよね。誰か現在進行形で訳してるのだろうか?
そうした精神分析については下記のページが参考になります。