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愛着と愛着障害のこれまでの研究

子どもの健全な成長のために

愛着障害は養育者との愛着が損なわれていたり、歪んでしまっていたりする障害です。では、そもそも愛着とはどういうものでしょうか。ここでは愛着についての歴史や基本的な研究・理論を振り返ってみたいと思います。

1.愛着についての歴史

愛着の理論2

19世紀ぐらいの欧米では、親のいない乳児を育てる乳児院において、乳児の死亡率の高さが社会問題となっていました。衛生面や設備面などを向上させることで、多少なりとも死亡率は改善しましたが、十分ではありませんでした。また、死亡せずに成長したとしても、発達が遅れていたり、情緒的に不安定だったりすることが往々にありました。

こうした問題について研究を重ねることで、物理的な衛生や設備ではなく、世話をする人がどれだけ乳児と接触したのかが、その後の死亡率や発達が遅れる問題に関係していることがわかってきました。

こうしたことが20世紀の初期から中期にかけて取り組まれたことでした。この課題を研究する中で愛着ということが人間としての発達に非常に重要であることが分かってきました。そして、それと同時に、愛着が欠けることがどれほど人間の成長に有害であるかも分かってきました。

愛着対象がいないことが非常に寂しい思いをすることは想像に難くないでしょう。

2.愛着についての理論

(1)ジョン・ボウルビィ

ジョン・ボウルビィの写真

図1 ジョン・ボウルビィの写真

児童精神科でもあり、精神分析家でもあったボウルビィは愛着の問題を研究テーマとして取り上げ、精力的に解明していきました。そうした中で愛着理論が徐々に出来上がっていきました。

愛着理論は人と人との接触や親密さと、それに基づく愛着行動について体系的にまとめた理論です。幼児は6ヶ月から2歳にかけて、継続的に接した養育者と活発なコミュニケーションをかわし、その養育者に対して愛着や愛情を示します。その後は、その愛着の対象である養育者を安全基地にし、少し離れては戻り、戻ってはさらに離れたところにいく、という探索行動を活発に行うようになります。

これが幼児の世界を広げることになります。また、養育者以外の人物との接触も徐々に増えていき、そうした人物との間でも愛着行動が形成されていきます。

(参考文献:Bowlby. ‘Note on Dr Lois Murphy’s paper, “Some aspects of the first relationship”.’ Int. J. Psycho-Anal., 45, 44-6. 1964.)

(2)ハーロウ

有名なハーロウのアカゲザルの実験というものがあります。胸当たりに哺乳瓶だけをつけたワイヤーの人形と、哺乳瓶はない毛布でできた人形を置き、子ザルがどちらに愛着を示すのか、という実験です。結果は空腹の時だけワイヤーの人形の哺乳瓶からミルクを飲みますが、それ以外の時間は哺乳瓶のない毛布の人形に抱きついて過ごしていました

このことからすると、単に栄養や食物を与えてくれるから愛着を示すのではなく、肌と肌の触れあいや接触が心を落ち着かせることが分かります。これも一つの愛着について考える一つの実験であると思います。

ハーロウのアカゲザルの実験

図2 ハーロウのアカゲザルの実験の様子

(参考文献:Harlow, H.F. 1979. The human model: Primate perspectives. V.H. Winston & Sons, Washington D.C.)

3.母性剥奪

愛着の理論3

もし何らかの事情で子どもが養育者との健全でほどほどの関係を持てなかった時、子どもはどうなるでしょう。何らかの事情で適切な養育を受けれない子どももいます。虐待などはその典型かもしれませんし、過去であれば戦争や紛争により、過酷な状況で生きねばならないこともあったでしょう。

イギリスの小児科医であり、かつ精神分析家であったウィニコットはそのようなことを愛情剥奪の観点から論じました。愛情剥奪の子どもは様々な困難を抱えます。もちろん、それでも健康に成長していく子どももいるでしょうが。

スピッツは子どもが長期にわたって施設で生活をすることによって心や身体の発達に遅れや障害が生じることをホスピタリズムと言いました。これは養育者との接触やコミュニケーションが不足することから起こるとされていました。そして、後に、養育者との接触やコミュニケーションが不足することだけではなく、同一人物との長期にわたる接触が大事であるということが分かってきました。

つまり、養育者がコロコロと変わり、一貫したアタッチメントが得られないことが子どもの心身の発達に問題が生じるのです。こうしたことも母性剥奪と言えるでしょう。

ルネ・スピッツ

図3 ルネ・スピッツ

(参考文献:Spitz, R.A. (1957). No and yes : on the genesis of human communication. New York : International Universities Press.)

4.内的作業モデル

愛着の理論4

乳幼児は母親にまとわりついたり、離れた時に泣いたりするといった行動レベルで愛着を示します。行動レベルの愛着が次第に変化し、対人認知の質を形成します。それと同時に、自分自身の自己認知・内的表彰としても形成されます。この愛着にまつわる他者認知と自己認知は、他者の自分への行動を予測したり、人との関係を事象と関連付けて理解し、他者への一般的な態度を形成する基盤となります

これをボウルビィは内的作業モデルと言いました。こうした内的作業モデルが愛着を通して形成していくことで、人間関係を維持し、ほど良い対人関係を楽しみ、社会の中で生活していける能力となります。

5.終わりに

愛着の基本的な研究や理論について書きました。こうした理論を知っているからこそ、愛着障害の理解や支援にも活用することができます。

その愛着障害についての詳細を知りたい方は以下のページをご覧ください。

愛着障害のカウンセリング・相談
愛着障害とは養育者との間で適切な愛情や接触がないことによって、対人関係上の問題が生じている障害です。反応性愛着障害と脱抑制性対人交流障害の2種類があります。また大人の愛着障害の問題もあります。愛着障害の治療には安全基地を作ることが大切です。

また、こうした愛着障害について相談したい方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

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【執筆者情報】

  • 北川 清一郎
  • 資格:臨床心理士、公認心理師、日本精神分析学会認定心理療法士など
  • 所属学会:日本心理臨床学会、日本精神分析学会、日本EMDR学会、日本臨床心理士会、日本公認心理師協会など
  • 役職:神奈川県臨床心理士会代議員、日本臨床心理士会委員などを歴任
  • 経歴:精神科や心療内科、教育センター、児童相談所、就労支援施設などでの臨床経験は約20年になる。また、臨床心理系の大学などでの非常勤講師を歴任。執筆した論文は多数。メディアや雑誌での出演経験も豊富。
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